トップページ ブログ 書籍・雑誌ご注文フォーム オリジナル出版のご案内 古本コーナー ブックフェア
2F・海の本コーナーより 港町グッズ(マリングッズ) 本屋の眼 月イチ書評「本の生一本」 わたしの棚 リンク集 マップ
海文堂書店 KAIBUNDO

★★ 本屋の眼 <その92> ★★


 花の命は短くて……、例年より遅い桜を愛でる間もなく、風雨が散らしてしまいました。人生ははかないものです。楽あれば苦ばかり、山あり谷ありどん底あり、わが身に置き換えてみれば、苦を背負って谷底を降りっぱなしと思うこともしばしばです。足腰弱り、よろけ、つまずき、こけて、ひっくりかえることだってあります。その上かそれ故か、精神的にも疲れてしまうこと、誰にだってあります。
 でもね、私、ちょっとしたことで立ち直ります。友人との付き合い、お客さんの笑顔、道端に咲く花、などと言えば恰好つけすぎです。一に○○妻(美人としてもエエのですが、丸顔なので)の上機嫌、二にガールフレンドからのお便り、三に面白い本(H本を含む)です。一は詳しく言及するに及ばず。二は最近全国から来ます(法螺半分、みな業界関係者)。三は、当然職業柄本は大きな喜びです。
 作家ご本人のお手製POPやサイン本が届いたり、作家さんの好意と出版社のとびきりの配慮で訪問があったりすると感激いたします。多くの方が本屋の現場を大切に思ってくださっています。
 3月末に藤田宜永さんがお見えになりました。新刊は『探偵・竹花 再会の街』(角川春樹事務所)――酒と煙草と女と孤独を愛する私立探偵――ハードボイルドです。ごくごく個人的なことを申します。長い間、この人と辻某氏は「憎しみの的」です。夫人が美女という、ただそれだけの理由です。単純な問題ですが、「クレオパトラの華が〜」です。世界史的重要問題なのです。ご本人たちにとっては言われのない怨恨でしょう。で、最近は阿部某氏が「にっくき敵」です。
美映子を返せー! 叫ぶ日々です。
 今月新しい出版社が活動を開始しました。「ぷねうま舎」といいます。ギリシア語で、風、呼吸、命の息吹……、希望につながる言葉です。記念の第一冊は、伊藤比呂美(訳・著)『たどたどしく声に出して読む歎異抄』。事情があってカリフォルニアと熊本とを往復生活している詩人です。アメリカ国内の異動もあります。旅の途中「死」についてぼんやり考えていますが、死にたくない……、親鸞の言葉を思い出し自分の言葉で表現したいと思います。アメリカ育ちのお嬢さんに読んでもらいながら書き取る作業から始めます。彼女はカナを一生懸命読みます。漢字が出て来たら「カンジ」と言って、つっかえながら読んでくれます。いつしかその声に著者の声がかぶさります。彼女の声には言葉の意味はついてきません。著者の声には意味がついてきます。それでも、彼女がたどたどしく読む親鸞の言葉が、著者の心にしみてきます。

桜花返せ戻せと泣く輩

2012年5月1日 (平野義昌)

『本屋の眼』番外編 《神戸・本屋漂流記》好評連載中
  →
http://www.mizunowa.com/soushin/honya.html)

⇒ バックナンバー